「私の美術散歩2021」 一年を振り返って

コロナ感染がようやく落ち着きを見せはじめ、社会が前向きに動き出そうとしています。2年ぶりに年末年始を家族とともに故郷で迎える方もいらっしゃると思います。まだまだ油断はできないので感染予防を徹底しながら、活動を広げてゆきたいですね。

さて、今年ギャラリーシーズは30年を迎え1年にわたって12の記念展を開催しました。その中からいくつかを振り返ってみます。

まずは3月に「日本の心-富士と桜」展を開催しました。富士は日本の象徴として古くから仰がれ親しまれた存在。洋画家・絹谷幸二さん(令和3年文化勲章受章)の個性溢れる「富士」をはじめ、中島千波など桜の名手たちの作品をご鑑賞いただきました。

続く「レゾナンス・エフェクト展」では、村上隆、奈良美智など国内外のアートシーンを席巻する現代アート作家7名の個性と表現が共鳴し、新たな感動をお届けできたと思います。夏には2つのガラス工芸展を開催。「藤田喬平展~日本のガラス工芸の粋~」では、イタリアで学んだ色ガラスと金箔を混ぜた「飾筥」で知られる藤田喬平(文化勲章受章)の作品を中心に日本のガラス工芸の名品を、またガレ、ドーム、バカラなどアールヌーボーからアールデコへ、100年の時を経た今も輝きを失わない西洋アンティークの名品もお楽しみいただきました。

9月にはイタリアで活躍する世界的彫刻家「安田侃の世界-永遠に-」を開きました。簡潔なフォルムと滑らかな曲線による白大理石やブロンズの彫刻で有名な安田さんの作品展は、東川町の「安田侃展」と同時開催で、道内はもとより東京からも多くの来場をいただきました。オープニングレセプションで安田さんは「目をつむって作品に触れてみてください。触ると自分の心が見えてくる。子供のころ、悲しかったこと。そこへ飛んで行けるのが彫刻です」と強調。10年前にJR旭川駅に設置された作品「天秘」にも触れ、「ローマでは2千年前の彫刻が街を見守っている。『天秘』も200年先、500年先の旭川を見守る作品になってくれたら」と語りました。

安田侃さんと筆者

最後に、私が実行委員長を務めさせていただいた「放浪の画家・山下清展」(道立旭川美術館)が2万人に迫る入場者数を記録しました。2度、3度と訪ねてくださる人も多く、コロナ禍の中、山下清の作品が多くの市民に感動と元気を与えてくれたことと思います。ご鑑賞をいただいた皆さま、実行委員の皆さまに心よりお礼を申し上げます。