2つの美術展から(下) 「中原悌二郎賞創設50周年特別展」に寄せて

旭川駅から北に車で20分。白い木造2階建ての美しい洋館が中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館です。第七師団の社交場「偕行社」として使われた歴史があり、その後郷土博物館となり、1994年に旭川市彫刻美術館として開館しました。

現在、旭川市彫刻美術館では「中原悌二郎賞創設50周年特別展」が開催されています。これまでの50年に及ぶ受賞作を展示し、時代の流れとともに変化し、多様化し、さらに発展する日本彫刻界の変遷を紹介しています。

中原悌二郎賞創設50周年特別展チラシ

日本の近代彫刻史に大きな足跡を残した中原悌二郎(1888-1921年)は、旭川の叔父のもとで9歳から14歳まで過ごしました。庁立札幌中学校を卒業後、画家を目指して上京し、荻原守衛との出会いから彫刻に転向し、わずか32歳の生涯に重要な作品を遺しています。1970年に中原悌二郎の功績を顕彰し日本彫刻の発展に貢献するために中原悌二郎賞が創設され、以降、この受賞作によるコレクションは日本の現代彫刻史を一目で見渡せるものとして高く評価されています。

さて、特別展の中からいくつか作品を紹介しましょう。1階は中原悌二郎の常設展示で、2階が特別展となっています。

玄関扉を開けて1階フロアで出迎えてくれるのが三沢厚彦の「Animal 2017-05」。ユニークな表情の鹿の木彫に思わず頬がゆるみます。舟越桂「そこだけの冬」は楠に彩色し、目に大理石をはめた肖像彫刻で、2階へ誘うように佇んでいます。

三沢厚彦「Animal 2017-05」

2階の展示室には40点以上もの受賞作が一堂に展示されています。その中でも第1回受賞作の木内克「婦人誕生」はブロンズの裸婦立像で、圧倒的な迫力をもって見るものに迫ってきます。佐藤忠良の「カンカン帽」は若く健康的な女性の横顔がすがすがしい印象。また、舟越保武「原の城」は少し前かがみの武者の立像で、目と口が空洞で呆然とたち尽くしているようであり虚無感を漂わせています。島原の乱をモチーフにしたものですが、その歴史的背景を知るとこの彫刻が物語っているものが分かるような気がします。掛井五郎の「バンザイ・ヒル」など、どの作品も個性に満ちて必見の価値があります。

「中原悌二郎賞創設50周年特別展」

2期:3/3日(水)~5/9日(日)※1期は終了

休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)時間:9時~17時

観覧料:一般450円、高校生300円、中学生以下無料