MBAよりもMFAの時代に

秋も深まりましたね。美術展や芸術祭などで芸術の秋を満喫されていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

旭川は彫刻の街です。10月初め、第41回中原悌二郎賞の表彰式に出席してきました。受賞されたのは、シマウマやクマなど動物をモチーフにした木彫で知られる三沢厚彦さん。三沢さんの作品は、道立旭川美術館にも収蔵されていますのでご存知の方もいらっしゃると思います。時代の新鮮な感覚を反映し、斬新な 手法などで多く鑑賞者を刺激し楽しませてい るというのが受賞理由です。今後のますますの活躍を期待したいと思います。

第41回中原悌二郎賞 受賞作品
三沢厚彦〈Animal 2018-01〉
©Atsuhiko Misawa, Courtesy of Nishimura Gallery
撮影:大沼ショージ
ロイヤル・カレッジ・

ところで、このところ経済界でもアートの注目度が高まっています。すでに、美術鑑賞を研修に取り入れる企業や、ビジネスパーソン向けデッサン教室へ大手企業の社員・ベンチャー企業の経営者らが通うケースが増えています。画家の視線やものの見方を知ることで、ビジネスでの創造力に生かそうとしているようです。

かつて欧米のビジネスの世界では、MBA(経営学修士=マスター・オブ・ビジネス・ アドミニストレーション)を持つことがステータスとされていましたが、今日ではMBAよりも、MFA(美術学修士=マスター・ オブ・アート)を持っている人の方が重宝されています。不景気になってもモノだけはあふれ続ける現代、魅力的な商品を生み出し、購入してもらうためにはデザイン性・アート性が鍵だからでしょう。それらを大学院で徹底的に研究してきてMFAを持っている人々は、理論と感性において、売上に直結するスキルがあるということで高く評価されています。多様化し、変化が激しく不確実性が高い現代を生き抜くためには、論理的思考だけでなくアート的な感性も併せ持つことが求められているのです。

また、論理を超えたビジネススキルを磨く方法として、多くの企業が採り入れているの がVTS(ビジュアル・シンキング・ストラテジー)です。 絵画などを鑑賞して感じたこ とを話し合い、人の目にその絵がどう見えるのかを知り、 自分の見方のパターンに気づくことは、変化を捉えて新しい発想を生む力になります。

私が講師を務める道新文化センターの美術講座では、このVTSを活用して、楽しみながら美意識を磨き、鑑賞力を身につけるプログラムを実施しています。

ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(英国)
修士号・博士号を授与できる、世界唯一の美術系大学院。グローバル企業向けの幹部トレーニングを実施し、ビジネスを拡大している。

※『グラフ旭川』2019年11月号掲載記事より