「岩橋英遠展」と「カラヴァッジョ展」に寄せて

北国の短い夏は足早に過ぎ、秋は駆け足でやってきます。野の草花の色は変わり、空にはとんぼの姿を見かけるようになりました。

さて、今回は「芸術の秋」にさきがけ、話題の2つの美術展をご紹介いたしましょう。

道立旭川美術館では「岩橋英遠(いわはしえいえん)展」が9/14(土)から始まります。岩橋英遠(1903- 1999)は滝川市出身。21歳で上京し壮大なスケールで自然をとらえた作品で高い評価を受け、平成6年(1994)には文化勲章を受章している北海道ゆかりの日本画家です。

見どころは代表作「道産子追憶之巻」で、全長約29メートルに及ぶ絵巻の大作です。故郷の風景を描いた画面は冬から始まり春、短い夏と秋、そして再び長い冬へと巡り、一年の情景と同時に、日の出から日没までの一日の移ろいも表現されています。中でも、夕焼けに染まる田んぼの上を無数の赤トンボが渡る秋の情景には目を奪われます。この作品は道立近代美術館のコレクションで、来場者による人気投票で第1位になったこともあり、北海道美術を代表する名作といえるでしょう。ほかにも、摩周湖を旅した際に一つだけ浮いている雲を画面いっぱいに描いた「彩雲」や、湖面に逆さ富士がゆらめく「氷結する湖」など、北海道の自然をテーマにした幻想的な風景画には、画家のふるさとへの強い思い入れが伺えます。会期中にはギャラリー・ツアーや美術講演会、表千家同門会によるお茶会や琴と尺八によるコンサートなどが催されます。

また道立近代美術館では「カラヴァッジョ展」が好評開催中です。16世紀イタリアを代表する天才画家ミケランジェロ・メリージ・カラヴァッジョ(1571〜1610)は、あたかも映像のように人間の姿を写実的に描く手法と、光と陰の強烈な明暗による劇的表現で人気を博し、後のルーベンスやレンブラントなど、17世紀バロック絵画に大きな影響を与えました。現存する作品がわずか60点で、ほとんどが祭壇画であるため移動できないものが多い中、「病めるバッカス」(1594)、「法悦のマグダラのマリア」(1606)、「リユート弾き」(1596)など10点ほどが来日します。

カラヴァッジョ展 会期:2019年8月10日~10月14日 会場:北海道立近代美術館

卓越した描写力と大胆な明暗技法で名声を手に入れるも、殺人を犯して逃亡し、刺客に命を狙われるなど38歳で病死するまで波乱に満ちた生涯を送りました。いったいカラヴァッジョとはどういう人物だったのでしょう。彼の遺した絵画にその糸口を探ることができるかもしれません。

岩橋永遠展 会期:2019年9月14日〜11月10日 会場:北海道立旭川美術館 旭川市常盤公園内カラヴァッジョ展 会期:2019年8月10日〜10月14日 会場:北海道立近代美術館
住所:札幌市中央区北1条西17丁目

※『グラフ旭川』2019年9月号掲載記事より