世界が絶賛した浮世絵師―葛飾北斎 その3

天才画家 ・葛飾北斎(1760~1849年)の展覧会「北斎展―師とその弟子たち―」が道立旭川美術館で好評開催中です( 11 / 27(日)まで)。

北斎作品の人気の秘密は卓越した技術と表現力、独自の芸術世界にあります。北斎はその 90年に及ぶ生涯で3万点もの作品を残しています。革新的な作風は世界にも多大な影響を与え、また世界中で北斎研究が進んでいまます。そういった意味で、さまざまな視点で企画された北斎展を私たちは、国内外で見ることができます。ちなみに北斎作品を常設展示しているのは「すみだ北斎美術館」(東京墨田区)があります。北斎が現在の墨田区亀沢付近で生まれ、生涯のほとんどをこの周辺で過ごしたことから墨田区では北斎の研究や普及に努めています。また、長野県小布施には「信州小布施北斎館」があります。地元の豪商・高井鴻山(儒学者、1806〜1883年)の招きで小布施を訪れ、傑作「祭屋台天井画」など貴重な肉筆画を描きました。高井は北斎の弟子で浮世絵師でもありました。また今春には、「大英博物館 北斎―国内の名品とともに」がサントリー美術館で開催されました。筆者も鑑賞致しましたが、北斎には英国にも多くのコレクターや研究者がいて、その歴史は19世紀まで遡ることができます。なかでも大英博物館には複数のコレクターから寄贈された優品が多数収蔵され、その質も世界でトップクラスと言われています。展覧会では大英博物館に寄贈した5人の蒐集家による北斎作品の展示コーナーがあり、蒐集家の視点を通して北斎の魅力に迫る内容でした。

最後に2017年、あべのハルカス美術館で開催された「北斎 富士を超えて」も印象深い展覧会でした。大英博物館との共同企画で実現したこの展覧会は、大英博物館と日本の両国で開かれました。晩年の作品に傑作が多いといわれる北斎の晩年の肉筆画を中心に、亡くなる3カ月前に描いたという絶筆「富士越龍図」(1849年)を観ることができました。全体に墨絵の筆致で描かれ、雄大な富士峰を超えて龍が昇天する図柄です。

大英博物館では北斎はimmortality (不死)を表す「百」という落款を、最晩年の87 〜 89歳の時に用いていたといいます。

作品には自分の限界に挑み続けた北斎の強い意志と誇りを見ることができ感動が収まりませんでした。画境老人・北斎の偉業は今後も語り継がれていくことでしょう。