「神田一明、日勝展」に寄せて

旭川市在住の画家神田一明さん(87歳)と鹿追町ゆかりの画家神田日勝(1937-70年)さんの兄弟による展覧会「神田一明、日勝展」が道立旭川美術館で3/13(日)まで開催されています。

兄の神田一明さんは東京藝術大学を卒業後、北海道に戻り道教育大旭川分校(現道教育大旭川校)に勤務しながら行動展や全道展で活躍しました。同校の名誉教授で2015年旭川市文化賞を受賞しています。3つ年下の日勝さんは中学で美術部に入り、兄に教わりながら油彩をはじめ、卒業後は家業の農業に従事しながら独立展や全道展で活躍しました。32歳いう若さで夭折されましたがその画業は50年を経た現在も多くのファンの支持を得ています。一昨年のNHK連続テレビ小説「なつぞら」に、山田陽平と天陽という兄弟が登場しますが神田一明、日勝がモデルになっています。

北海道ゆかりの二人の兄弟による作品展は美術ファンのみならず多く人々が会場に足を運んでいます。

会場には神田一明さんの芸大在学中の裸婦や室内を描いた作品から近作まで32点と日勝さんの自画像や馬、画室を描いた22点、計54点が展示されています。それぞれに年代順に4つの構成となっていて、作風や表現の違いなど画家として異なる道を歩みながらも、兄と弟の絆を感じさせる作品や資料が並んでいます。

神田一明さんは初期の褐色を中心とした室内静物や風景画から、「青の時代」といわれる青を基調にした室内風景へ、その後、室内に人物が登場する作風の変遷を経て現在に至っています。画面には椅子や時計、瓶や楽器などさまざまなモノが綿密に計算され絶妙なバランスで配されています。色彩の調和と具象性を保ちながらも表現主義的な作風で見る人に強いインパクトを与えています。

神田日勝さんは農作業で使う道具や「馬」や「牛」をといった身近なモチーフを重厚にかつ克明に描写しています。初期の暗褐色の色調と激しい筆触から「画室」の連作では 赤、青、黄などの原色がふんだんに使われるなど目まぐるしく画風を変えながら、独自の画境を打ち出しました。会場の最後に展示されている「室内風景」(1970年)は、まるで一枚一枚の新聞紙が画面に貼られているかのように細密に描かれています。中心に座る男の視線からは人間が抱える孤独や苦悩を問いかけるように心に迫ってきます。

3月13日(日)まで。

「神田一明、日勝展」道立旭川美術館 開館時間 9:30~午後5時 休館日月曜日

観覧料 一般800円(600円)高大生500円(400円)小中生300円(200円)※( )は前売