「放浪の天才画家・山下清展」の見どころと作品の魅力 その4 

「放浪の天才画家・山下清展」(道立旭川美術館)は好評開催中です。連日多くの鑑賞者が訪れています。

「日本のゴッホ」とも称され、色鮮やかな貼絵による独特の世界で知られる山下清(1922-1971年)。その生涯は映画やテレビドラマにもなり、今でも幅広い層から支持されています。生前に開いた個展には80万人もの人が押し寄せたという記録もあります。なぜ、それほどまでに人々の心を捉えたのでしょう。その人気の秘密を紐解いてみましょう。

今回の展覧会は3つの章で構成されています。

第1章は「少年期から放浪へ」。山下清が暮らしていた八幡学園での様子を中心に、身近な昆虫や花などを描いた貼絵が紹介されています。中には古切手の模様を生かした貼絵もあり早くから創作への意欲がみられます。

第2章では「放浪期から画家へ」。旅先で見た日本の風景の貼絵と独特の手法で描かれた油彩画や水彩画、マジックペンによる点描の世界などさまざまな作風に挑戦し、画家として表現力を高めていく過程をご覧いただけます。

第3章は「円熟期から晩年にかけて」。ヨーロッパ旅行で見た風景の貼絵や油彩画や水彩画のほか、絵付けした陶磁器、晩年に取り組んだ大作「東海道五十三次」までを資料とともに紹介しています。「ロンドンのタワーブリッジ」(1950年)は貼絵でありながら流麗な筆致を思わせる超絶技法で、目を奪われます。

加えて特筆するのは作品に添えられた山下清の言葉です。代表作「長岡の花火」では、「みんなが爆弾なんか作らないで、きれいな花火ばかり作っていたら、きっと戦争なんて起きなかったんだな」とか、他にも「自分がいい処へ行こう。行こうと思うと、少しもいい所へ行かれない。いい所へ行こうとしなければ、しぜんにいい所へぶつかる。いい所へ行こうとするから、いい所へぶつからないんだろう」など、彼の言葉とともに作品を見ていくと、彼が何を考え、何を感じながら作品を生み出したのか、その思いに触れる気がします。

放浪の天才画家・山下清展は11/23日(祝)まで、総数130点が一堂に展示されています。お見逃しなく!(おわり)

 

観覧料は一般千円、大学生と高校生800円、中学生以下無料。午前9時半~午後5時。月曜(9/20、11/1を除く)と9/21は休館。

山下清「ロンドンのタワーブリッジ」(貼絵) 1965