「放浪の天才画家・山下清展」の見どころとその魅力  その3

「放浪の天才画家・山下清展」が、9月18日(土)から道立旭川美術館で始まりました。「日本のゴッホ」と称され、激動の昭和を駆け抜けた山下清(1922~1971年)。鮮やかな色彩の貼絵で独自の世界を確立し、その作品は今も多くの人びとに愛されています。

 

会場には山下清の少年期の作品から、放浪を始めた戦時中~戦後の作品、放浪後に画家としてさまざまな手法を取り入れた作品まで、貼絵を中心に油彩や水彩画、ペン画、陶磁器の絵付など約130点が展示されています。併せて愛用のリュックと傘、放浪日記や山下清自身の言葉、家族の証言などから山下清の〝真の姿“に迫る内容となっています。

 

山下清は驚異的な記憶力の持ち主でした。彼は18歳から32歳までの14年間、放浪生活を続けましたが、旅先ではいっさいスケッチはせずに、各地で見た風景や人々の暮らしを自分の心に焼き付け、家に戻ってから記憶をもとに再現しています。

豊かな色彩感覚も彼ならではのものです。色紙のちぎり方に変化をつけたり、少しずつ違う色の色紙を重ねて貼ることで陰影をつけたり、「こより」を使って立体的に表現したりしています。

代表作「長岡の花火」(1950年)の漆黒の夜空と花火の色彩対比、埋め尽くされた観衆や水面に映る花火の細密描写は息を呑むほどです。また「桜島」(1954年)は、波にきらめく光を表現するために青と白の色紙を大小に細かくちぎり、色紙の貼り方を工夫し遠近感を強調しています。 「ロンドンのタワーブリッジ」(1935年)やパリの「サクレクール寺院」(1962年)などはまるで絵筆で描いたようなタッチで、貼絵とは思いないほど写実性と臨場感に溢れています。

他にも油彩や水彩、ペン画や陶器の絵付などに挑戦し、画家として新境地を開きました。ぜひ、美術館で実物をご覧いただければと思います。

 

尚、会期中のイベントとして山下清の作品を見て、クイズに答えるワークシートや自宅で貼絵が体験できる「紙皿貼絵」などあります。また、9月24日(金)~26日(日)には学芸員による見どころ解説(無料)が開催されます。申し込みは0166-25-2577へ。

 

料金は一般1000円(前売800円)高大800円(前売600円)中学生以下無料

 

山下清「桜島」(貼絵)1954年 ※展示作品は変更になる場合があります。