「中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館」を訪ねて

中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館をご存知ですか。白い木造二階建の洋館で正面にポーチがつき、大きな窓やベランダがあります。旧陸軍第七師団の社交場「偕行社」として使われ、館内にはそこかしこに往時を偲ばせる装飾が見られます。その歴史と意匠から現在は国の重要文化財に指定されています。

7月中旬、私が講師を務める美術講座の受講生の皆さんと市彫刻美術館を訪ねました。

学芸員の斉藤真理子さんから館の歴史や中原悌二郎と中原悌二郎賞について、また市の「彫刻の街」への取り組みなどのお話を伺いました。直接説明を受けたことで、受講生の方々は彫刻への理解を深められたようです。

学芸員の斉藤真理子さんからレクチャーを受ける受講生

1階は企画展示で彫刻にまつわるさまざまな展示やイベントが行われています。2階は常設展示で、旭川ゆかりの彫刻家・中原悌二郎(1888年‐1921年)の「若きカフカス人」などの現存する彫刻12点と、中原ゆかりの彫刻家・荻原碌山や石井鶴三らの作品、佐藤忠良をはじめ歴代の中原悌二郎賞受賞作を展示しています。日本の現代彫刻史を一目で見渡せる貴重なコレクションとして、必見の価値があります。

1970年、旭川市は日本の近代彫刻史に大きな足跡を残した中原悌二郎の功績を顕彰し、日本の彫刻発展に貢献する目的で「中原悌二郎賞」を創設しました。国内で発表された日本人彫刻家の作品の中から、中原悌二郎賞と優秀賞の2点が選ばれ購入されています。(第36回からは隔年となり、中原悌二郎賞の1点のみの購入)。1972年に日本初の恒久的な歩行者天国「買物公園」がつくられると、買物公園をはじめ橋や街なかに広く彫刻が設置されるようになりました。

さらに旭川市民は、自発的に彫刻を清掃するボランティア組織「彫刻サポート隊」や、彫刻を購入して市に寄贈する「彫刻ファンドの市民の会」(現在は天秘の会)を結成。彫刻家を招聘して彫刻の公開制作を行う「旭川彫刻フェスタ」を実行委員会方式で開くなど、さまざまな活動を市民主体で営んでいます。

旭川の街なかでは、四季折々に彫刻の魅力を楽しめます。真冬に雪を被った彫刻は、夏と違う姿を見せてくれますし、同じ彫刻でも眺める場所や季節、時間によって異なる印象を受けて面白いものです。

今秋、中原悌二郎賞は50年を迎えます。新たな50年へ、彫刻のまちは歩みを進めています。

中原悌二郎記念 旭川市彫刻美術館

●中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館 旭川市春光5条7丁目 0166-46-6277

観覧料 一般450円、高校生300円、中学生以下無料(70歳以上は減額・免除となる場合があります) 井上靖記念館共通券があります。

●旭川市彫刻美術館ステーションギャラリー JR旭川駅舎内  観覧料無料