美術史が欠かせない教養に

今や日本は空前の美術ブームといっても過言ではありません。全国各地に美術館があり、世界屈指の名画を収蔵する美術館も少なくありません。東京をはじめとする大都市では話題の美術展に連日長蛇の列ができ、入館できるまで2時間~3時間待ちは当たり前だそうで、その人気の高さに驚かされます。また現在、東京・上野の森美術館で開催中の「フェルメール展」(2月3日まで)では、時間予約制が導入されているそうです。

このような昨今の美術ブームもあって、このところ美術史に注目が集まっています。書店にいくと、今までは専門書コーナーにあった美術関係の書籍が、ビジネス本のコーナーに平積みされているのを見かけるようになりました。美術フアンはもちろんですが、企業家やビジネスマンの間にもこの動きは広がっているようです。

それらの書籍のひとつである『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』は、刊行から2ヶ月で5万部を売り上げ、このジャンルの中では異例ともいえるほどの人気本に。帯には「美術史を知らずして、世界とは戦えない」とあり、筆者も手に取りましたが、絵画にまつわる時代の世相や歴史が簡潔に解説されていると感じました。また絵の背景や意図も理解しやすく入門書として役立つ1冊だと思います。

以前も、エイミー・ハーマン女史箸の『観察力を磨く-名画読解』をご紹介しましたが、欧米人にとって美術史は必須の教養であり、コミュニケーションを深めるうえで重要な「共通言語」となっています。そして英国のウィリアム王子とキャサリン妃の出会いは、大学の美術史の講義だったといいます。

社会がグローバル化し、ようやく日本でも美術史の重要性が認識され始めています。社員教育の一環として社員や幹部候補に向けて、美術・文化に関するセミナーを開く企業も増えつつあります。

それにしても社会で生きていくためには、異文化を学ぶことが必要不可欠な時代に入っているのですね。

世界中の人々とより深いコミュニケーションをとるためにも、ぜひ西洋美術史という教養を身に付けてはいかがでしょうか。


※『グラフ旭川』掲載記事より