春の陽光に誘われ、旭川から道央自動車道に乗りました。急に「アルテピアッツァ美唄」に行ってみたくなったからです。美唄インターで降りて2キロ、のどかな山里に入ると木々に囲まれた芝生の緑と白い大理石の現代彫刻「妙夢」が目に飛び込んできました。赤い屋根の木造校舎が懐かしさを誘います。
ここは、かつて炭住街にあった学校の跡地を利用した芸術文化交流施設。美唄市出身の彫刻家、安田侃さん(イタリア在住)の作品を屋内外に設置し、いつでも作品に触れることが出来る野外彫刻公園です。自然とアートが一体となった空間は、春には桜、秋には紅葉と四季折々に国内外から多くの人が訪れています。私も何度も足が向いてしまう不思議な空間です。その魅力は何なんなのでしょう。
広場を歩いてみるとどっしりと大きな超重量級の彫刻に出会います。彫刻に導かれてなだらかな丘陵を上がると、またひとつ彫刻と出会います。広場のあちこちに配されたブロンズや大理石の抽象彫刻はどれも周囲の自然と絶妙なバランスで響きあっています。
芝生に寝転ぶ人、彫刻に抱きつく人、カメラで写真を撮る人。誰もが思い思いに自分の時間を過ごしています。彫刻に触れながら自分自身を見つめ直せたような気がします。
安田侃さんとの出会いは2003年に、旭川市彫刻美術館で開催された「舟越保武展」に合わせて開かれた講演会でした。安田さんは東京藝術大学で舟越先生に師事し、舟越石彫教室の学生の第1号と言われています。講演会に参加した市民から「安田先生の彫刻を旭川で設置できないだろうか」と声があがり、「旭川彫刻ファンド市民の会」が発足しました。市民自らが資金を集め、作家や作品を決めて設置するという全国初の試みに、安田さんの協力もあり、2011年に旭川駅舎の完成に合わせ、ホワイトブロンズ製の「天秘」を設置させていただきました。8年に及ぶ活動には420人の会員と360の企業や団体からの支援や協力をいただきました。「天秘」は旭川市に寄贈され、その後発足した天秘会のメンバーにより今も隔月で作品の清掃と鑑賞会が開かれ作品の維持、管理が行われています。
今年はアルテピアッツァ美唄の開設から30年を迎えるそうです。
地域と人、人と芸術をつなぐ場としてアルテはこれからも輝きを増すことでしょう。