北海道立旭川美術館「京(みやこ)の美術」に寄せて

コロナ禍で休館していた全国の美術館や博物館が相次いで再開されました。美術ファンには嬉しいニュースです。各美術館では日時指定予約制による、時間毎の人数制限を設け、混雑を避け、マスク着用や入館時の体温測定、並ぶ場合は1メートル以上の間隔をあけるなどの対策がとられています。

そして北海道立旭川美術館では、明治以降の京都ゆかりの作家たちによる洋画や日本画、工芸の名品を集めた京都国立近代美術館所蔵作品展「京の美術―洋画、日本画、工芸」(7月11日~8月30日)が開かれています。京都国立近代美術館のコレクションから選りすぐりの約80点が展示され、見応えたっぷりです。

京都ゆかりの画家といえば、江戸時代には伊藤若冲、与謝蕪村、円山応挙らが活躍しましたが、明治後期から昭和初期にかけては、竹内栖風が門下の上村松園、土田麦僊とともに新しい京都画壇を創造しました。

一方、洋画では明治後期に洋画家・浅井忠が関西美術院を創設し、梅原龍三郎や安井曾太郎など近代洋画壇を代表する画家が活躍します。また同時代に活躍した工芸家や民芸運動の富本憲吉や河井寛次郎のほか、北大路魯山人、現代陶芸の十五代樂吉左衛門らの作品が紹介されています。

さて、ここでは「京の美術」の出品作から2点をご紹介いたします。上村松園の「舞仕度」は、裕福な家の座敷を舞台に4人の女性が描かれています。一人はやや緊張の面持ちで扇子を帯に挿し、舞を披露する仕度をしています。他の3人は赤い毛氈の上で、1人は鼓を携え、2人は談笑しています。女性たちの表情やしぐさ、着物の模様や帯の柄、髪型の描き方に、松園ならでは視点がうかがえます。

上村松園「舞仕度」

また、土田麦僊の「罰」は、道草をして遅刻をしたのか、教師に叱られて廊下に立たされている3人の子供が描かれています。女の子は泣きじゃくり、男の子も1人は宙を見つめ、もう一人は少女に視線を向けています。子供たちの表情やしぐさから、遅刻の原因は何だったのか想像を働かせてみるのも面白いですね。

なお、第2展示室では「旭川ゆかりのアーティスト」の作品が紹介されています。

旭川で生まれ育った、あるいは現在、旭川を拠点に活躍する作家たちの絵画や版画、彫刻などが展示されています。