「ふるさと納税」といえば、特産品の食べ物を連想される方も多いと思いますが、ふるさと納税で美術館の運営やアートコレクションに寄付を募る自治体もあり、少しずつ注目を集めています。
青森県弘前市では、来年4月に開館予定の美術館に展示するアート作品の購入資金として「ひろさき応援寄附金」(現代アートコレクション応援コース)を創設しました。地域の特産品に加えて、特別返礼品として美術館へのアプローチとなる「ミュージアムロード」敷設用のれんがに名前を刻む「ふるさと納税」がその例です。美術館運営のサポートができ、さらに名前も残るなんて、お洒落ですね。ただ、こうした取り組みは全国的には例が少なく、道内でもまだありません。
また、東京国立美術館や西洋美術館なども運営のための寄付金を募っています。こちらは寄付額に応じて無料鑑賞券やミュージアムグッズが贈られます。賛助会員になれば、美術展のオープニングの招待や各種イベントの案内も届きますが、美術館への寄付もサポートもまだまだ少ないのが現状です。
一方、欧米では美術館への寄付やサポートには長い歴史があります。ニューヨークのメトロポリタン美術館は、パリのルーブル美術館、ロンドンの大英博物館と並ぶ世界三大美術館のひとつです。ルーブル美術館や大英博物館は国立ですが、メトロポリタン美術館は私立美術館です。巨大な館内にはルノワールやゴッホといった著名な芸術家たちの作品から、ビザンチン帝国の宝物やメソポタミア遺跡からの出土品など、世界的にも貴重な文化遺産が展示され、その所蔵品数は330万点にものぼります。
実は、そのコレクションの多くは基金による購入や様々なコレクターからの寄贈で賄われています。歴代館長はコレクションの充実のため、作品購入を企業に持ち掛けるのが重要な任務で、館内の美術品説明ボードには寄贈した個人や企業名が記載されています。ちなみに別館の「クロイスターズ」は、中世の教会や修道院をヨーロッパから移築したものですが、ここは建物そのものが大富豪ロックフェラーの寄付で建てられました。
米国では個人の美術分野への寄付金総額が22兆9000万円に達しています。これに対して日本は2189億円で、実に100分の1以下なのです。(内閣府:税制調査会)
もちろん、歴史的、伝統的、宗教的なバックグランドは違いますが、弘前市の「ふるさと納税」の事例を参考に地域文化を支える取り組みが広がれば良いと思います。